ITILの大きな特徴は、ITサービスの課題解決にはマネジメントが不可欠であるという考え方に基づき、理論先行ではなく経験から得られた知識を体系化した点にあります。すでに英国ではITILをベースにしたITサービスマネジメントの規格であるBS15000の認証が2003年7月からスタートしており、2005年12月には国際規格であるISO20000が発行されるなど、その有用性は欧米を中心に、世界的に認識されています。
ただし、ITILで使われている用語の定義にはあいまいな部分もあり、ITILの書籍を読む際には注意が必要です。今回エキスパートインタビューにご登場いただいた株式会社サービス戦略研究所の河本公文氏によれば、その代表的な用語に「ITサービス」や「サービス品質」があります。
例えばITサービスとは、すでに紹介したとおり、基本的には経営戦略や事業計画の達成に向けた組織的な取り組みを支援するために、ITシステムが提供するサービスという意味です。ところが使用している場所によっては、システム運用やアプリケーション管理といった情報システム部門が提供するサービス、情報システム部門内で後方部隊が支援するサービス、独立したITサービス企業が提供する広範囲のサービスという意味になっているといいます。
また、河本氏によれば「サービス品質」と「サービスレベル」が同義の用語として使われていることが、実務上のわかりにくさを生んでいる要因の一つだと指摘します。ITILを導入する際には、サービスレベルは稼働率やスループットに代表される、サービスを受ける側が認識できる水準であり定量的な指標、サービス品質は同じ定量的指標であっても、そのサービスレベルどおりに実行できる度合いといった定義を明確にした議論が必要になるといいます。
こうした標準用語の改善や定義の明確化も含め、ITILは新規バージョンに向けた改訂作業が進められています。現時点で明確になっているのは、戦略から設計、移行、運用、継続的改善というITサービスマネジメントのライフサイクル全体をカバーするという方向性。現行の「サービスサポート」と「サービスデリバリ」はその中の運用部分に反映される予定です。このほか、ITガバナンスのフレームワークであるCOBIT(Control
Objectives for Information and related
Technology)など、他のフレームワークや規格との併用を容易にする資料なども提供される予定です。
※ITILは英国政府のOGC(Office of Government
Commerce)の登録商標です。 ※COBITはISACA(Infomation Systems Audit and Control
Association)の登録商標です。
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